アクエリのほほんブログGX

アクエリのほほんブログが進化しました(笑) 超絶不定期更新

氷山の一角

いつも、いつでも、の続きになります。

興味があればそちらから。

 

9月某日。

名古屋駅で人を待っていた。

親友であるサトシを待っていた。

岐阜行きの二枚の切符を握りしめて。

 

夏休み。

泊まりに来たサトシと一緒に、自分は地元愛知に帰ることになっていた。

「一度モモコと会って話をした方がいい」

道中、電車内でサトシに言った。

というのも、あまりにも呆気ない幕引きに納得していない自分がいたからだ。

夏休み中にはっきり決着をつける、と息巻いていたわりにモモコはLINEで一方的に別れを告げた。

今後の二人、いや三人のためにも、直接話すべきだと思った。

「任せた、そんな機会作れない」

これまでの行動、多少は感じていた責任を鑑みても断るはずがなかった。

 

サトシには名古屋で遊ぼうと誘い出した。

モモコには話があるから岐阜まで行くと言った。

三人で会うとは言わずに。

 

「俺は次の電車で岐阜まで行く」

「……岐阜ですか」

「これ、岐阜行きの切符。これを使えば当然岐阜までいけるけど、反対に乗れば区間分帰れる。いつもみたいに強制しない、判断は任せる」

「それにしても唐突じゃない?聞いてないんだけど」

「言ったら名古屋までも来ないと思ったし。それにこの前の帰りの電車覚えてる?任せた、って言われたから」

「……」

「じゃあ、もし、岐阜に着いたら連絡して」

まだ何か言いたげなサトシを置いて改札を抜けた。

 

「話って何?」

喫茶店で待っていたモモコは不機嫌そうに言い放った。

「話ってか、まぁ…1つしかないんだけどさ」

「ですよね〜事後報告でごめんね」

謝ってほしいのはそんなことじゃない。

「いやね、俺はてっきり、せめて電話で終わらせたのかと思って。サトシがどう思うかとか聞かず一方的にさ〜それで納得したのかね」

スマホが振動した。

『着いた、どこにいるの?』

モモコにサトシが来た旨を伝えた。

嫌そうな顔をした。

「選択させたのはありがとうね。勘づいてたし、二人が一緒に来たら帰ろうと思ってた」

「でも私が喋ることはないからね」

「不満がたまって限界だから別れるんだろ?その辺のこと話してやらんと納得しないじゃん」

「……聞かれたら答える」

 

店を変えて、合流した。

三人が顔を合わせるのも久しぶりだった。

ただそこには以前のような和気藹々とした雰囲気はなく、正直地獄だった。

サトシは何も聞かず、モモコは何も話さない。

堪えかねて自分は口を開いた。

「今までで一番強引なことした自覚はあるよ、ごめん。でもここで思うことあるのに何も話さないで終わったら後を引くじゃん。二度とこの三人で会うことなくなるぞ」

「いやまぁ、三人では会わないでしょうね」

モモコは冷たく言葉を交わした。

「何もないなら時間の無駄だしお開きでよくない?」

何でそんなに冷たいのか分からなかった。

サトシはそれまで沈黙を維持していたが、ついに破った。

「どこで間違えた?」

雄弁だったモモコは一瞬言葉に詰まった。

「…間違えた、とかじゃなくて……一応私には夢があってそのために大学にいるのね、だからそれに集中したいの。あとは……やっぱり仲の良い友達を抜けきれなくて好きじゃなかったんだと思う」

これまで自分が聞いていたことが初めてサトシにモモコの言葉で伝わった。

一瞬の沈黙のあと

「お疲れ様でした」

そういって会計の金を置いてサトシは店を出ていった。

「…今の言い方だと、付き合ってる間ずっと好きじゃなかったみたいに聞こえたけど」

「そりゃ最初は好きだったけどさぁ…なんていうか、疲れちゃった」

そのあともモモコと少し話して別れた。

名古屋でサトシと合流して夕飯を食べて帰った。

 

誰にでも、これだけは譲れないという大事にしたいものがある。

その大事なものの中でも優先順位をつける。

彼女は、その大事なものの中に彼を含めなくなったらしい。

自分を含めた、三人の関係も、だ。

「アクエリは三人の繋がりを大事にしてたみたいだけど、私にしてはあんまりだったのかな」

二人になって彼女はそう言った。

流石に勝手すぎると思った。

彼は彼女のこと好きだったし、自分は大事にしてた関係。

それなら最初から相談なんてしてほしくなかった。

二人の間で解決してほしかった。

そういうことは直接人に言えちゃうんだと思った。

俺が傷つくようなことも平気で。

「ふーん……そっか」

腹が立ちすぎて驚くほど冷静になった。

はっきり言って、失望した。

 

自己満足、わがまま、自分勝手といえばそこまで。

本来会う必要もないのに会わせて関係を悪化させたかもしれない。

実際、悪化した。悪化なんて言葉ではすまされない。

それでも、会いたかった。会って話がしたかった。彼らが、ではなく自分が。

余計なことをしたとは思わない。反省もしない。

 

受け止めて包摂はしたものの、決別には時間がかかりそうだ。

なんせ彼らは「高校生活を語る上では欠かせない存在」なのだから。

 

非常に長くなりましたが、以上が親友の話でした。

モモコとはこの日以来連絡を取っていません。

よっぽど忙しいのでしょうか、最近はサトシからの連絡もまちまちになりました。

もしサトシの大事なものからも自分が外されてしまったのなら。

この件はもっともっと深く自分に突き刺さるでしょう。もっとも、確認する術などありませんが。